第28回:いきなり引っ越しとはどういうこと。

橿原神宮前のホテルでの麻雀が終わり、予想通りレーサー岡谷の一人勝ち。八熊伝が見つかったとハンター竜田から連絡があったので、竜田村に向かうことにするじぇーんとクリムゾン真鍋。

真鍋:厳しくも楽しい麻雀だった。じぇーんは麻雀楽しかったかい。

じぇ:めちゃめちゃ楽しかったです、またやりた~い。

真鍋:次の機会にはじぇーんもメンバーに入れておくよ、では、そろそろ自宅に一旦戻るとするか。チョモに電話して様子を聞いてみよう。

じぇ:まだ6時だから寝てるかもしれませんね。

真鍋:おはよう、おはよう、おはよう牛乳~。新しい朝が来ました、起きてください、チョモランマくん。

チョ:もう起きてるよ、今日は鉄緑会の定期テストだから、夜型に変えて夜中の1時から勉強しているから、そろそろ寝る時間だけど。

真鍋:それは、頑張ってるな。

チョ:それはそうと家で大変なことが起きてるよ。

真鍋:大変なことってなんだろう。詳しく話してくれないか。

チョ:話してる時間はないんだ、それに色んな事情があって詳しく説明するわけにもいかないんだ。とにかくクリムゾン真鍋は大船に引っ越ししないといけないことになったよ。

真鍋:ぎょえ~、なんでそういうことが勝手に決まっていくんだ、全く謎だ。

チョ:そういう生き方してるからじゃない、自業自得ってやつね。

真鍋:しかし、大船ね。大船といえば、チョモが香港在住中に、日本での拠点にしていた街だな。食べ物はうまいし、なかなか楽しい街だ。

チョ:そうそう、大船は楽しいよね、ということで僕はこのまま都内にいるけど、クリムゾン真鍋は大船に引っ越しよろしくね。

チョモランマ桐からの連絡で、急遽大船に引っ越しすることになったクリムゾン真鍋。目的地をハンター竜田の村から急遽大船に変更することに…。

じぇ:大船に引っ越しなんですか。大船ってよく知りませんが。

真鍋:大船はチョモの中学受験の時に日本での拠点にしていた場所なんだ。香港と日本を行き来しながら、長期休みにはサピックス大船校に通っていたんだ。

じぇ:そうなんですね。

真鍋:うちの一家は引っ越しが多いからね、色んな事情で日本全国を転々としているわけだ。おかげでチョモのサピックスも、下高井戸校をはじめに、西宮北口校、茅ヶ崎校、大船校と4箇所も転校したわけだ。香港小学校に在籍しながら長期の休みには日本に戻ってサピックスに通う生活だったわけだね。

じぇ:そんなに校舎を転々として問題ないんですか。

真鍋:サピックスは、他の塾と違ってすべての校舎が直営校なんだ、だから校舎を変わるのは比較的簡単。もといた校舎に申請を出せば、翌週には新しい校舎に行ける。

じぇ:それは便利ですね。

真鍋:ただ人気の校舎は店員オーバーで入れない場合がある、その場合は近くの校舎に入って、空きを待つという考えなんだ。

じぇ:なかなかおもしろいシステムですね。

真鍋:人気の大規模校である、東京校、成城学園校、自由が丘校、ここは1学年300人とか400人とかいて、クラスも25近くある。1クラスが定員15人くらいだから大規模校はクラスが多くなるね。

じぇ:どうして大規模校は人気なんでしょうか。

真鍋:それは、大規模校のほうが競争している感じが強いから安心感がある。ただ、人数が多くて塾の中で友人を作るのなら、小規模校のほうがいいよね。小規模校だと成績順のクラスもだいたい固定されてきて顔見知りができやすいが、24クラスもあると、似たような成績でも微妙にクラスが違うので、同じメンバーと仲良くなる機会が少ない。

じぇ:それはわかりましたが、マスターはなぜチョモくんの受験の4年前に大船校を選んだんですか。

真鍋:それは、良い質問だね。私のようなサピックス専門家しか知らない特別ない事情があるんだ。

じぇ:事情、ぜひ聞きたいです。

真鍋:首都圏の受験は、2月1日が東京、2月2日が神奈川とエリアによって同じ日になるように調整されている。そのため、自宅から通える範囲で、出題傾向が似ている学校を東京エリア、神奈川エリアで選んでおくと、2回チャンスがあるわけだ。例えば、開成中学と聖光学院は傾向が近いからセットで考えられる。

じぇ:なるほどなるほど。

真鍋:そのなかでも、麻布中学と栄光中学は、記述を中心にした思考力を大切にする入試を行っているので、この2校を受けるためには、少なくとも6年生の9月の時点で明確に志望校を確定させる必要があるんだ。記述中心の学校はかなり少数派だけどね。

じぇ:それからそれから。

真鍋:問題傾向がそっくりで、その対策もほとんど同じにできるこの2校だが、麻布は日比谷線広尾駅、栄光は横須賀線大船駅と1時間位離れている。東京西部に住んでいる場合は、どちらにも通うことができるが、東京でも開成のある日暮里エリアとか、千葉の渋谷幕張エリアからは大船に通うのは困難。ということで、麻布中学、栄光中学に愛が深い子供は、東京と神奈川の間に住んでいる場合は、この2つを候補にすると、勉強の負担が軽減される。

じぇ:なるほどなるほど。

真鍋:都内からすると、大船は遠いイメージがあるから、都内の校舎では麻布コースは設定があっても、栄光コースはあまり設置されていない。逆に、栄光の近くの大船校とか横浜校には麻布コースと栄光コースが併設されている。土曜日が栄光コース、日曜日が麻布コースと両方の勉強ができる。だから、大船校は特別に恵まれた校舎なんだ。

じぇ:なんだか眠くなってきました。

真鍋:もうすぐ終わるから、頑張って聞いてね。で、サピックスの都合もあるが、大船という街は、なかなか魅力的な街でね。三菱電機や資生堂、東芝系の工場や研究所があるので、駅前の飲食店がすごく栄えている。

じぇ:急に目が覚めました。美味しいお店がたくさんあるってことですね。

真鍋:そうそう、それに湘南モノレールを使うと、大船から江の島まで簡単に行ける。鎌倉や逗子や葉山にもJR横須賀線でスムーズに行ける。

じぇ:あれはなんですか、マスター。白くて大きな像が見えますが。

真鍋:どうやら大船についたようだな、あれが大船西口にあるランドマークの大船観音だ。

じぇ:なかなか目立ちますよね。目から謎の光線を発射しそうな感じです。

真鍋:観音様は眼力が強いよね。大船に住んだことない人にとっては、観音像は印象に残るよね。ただ、大船に住んでいると駅の西側にはあまり行く機会がない。観音像は西側にあるから、1年も住んでると全く意識しなくなる。それより、松竹の撮影所があったから、その名残のほうが楽しいぞ。我々と同じ人種の映画人が闊歩していた街、ゲーム制作者にとっては極めて住みやすい街だ。

松竹大船撮影所とは、かつて大船にあった松竹の撮影所であり、寅さんなどの名作を生み出した場所である。現在はイトーヨーカドーになっているが、中に作られたフードコートで讃岐うどんを食べていると、ふとそばを寅さんが歩いているような気になるから不思議である。 「出典:近代芸無辞典より」

大船駅を降り立ち、駅前を散歩するクリムゾン真鍋とじぇーん。

そういえば、大船にはめちゃくちゃ美味いレストランがいくつかあるが、きょうは私がお気に入りのイタリアンで飯を食っていこう。ということで、商店街の裏路地をぬけて・・・

真鍋:ここ、ここ、ここ、大船ブロッソのイタリアンは最高にうまい。

じぇ:しかし、大船にはいつまで住むのですか。マスターはホテルぐらしですよね。

真鍋:じぇーんは、都内でチョモと一緒に居てくれ、用事があるときは大船に呼ぶから、必要なものを持ってきてくれればいい。

いえっさー。銀座カレーとか必要ですよね。

大船での生活はタイムリミットが決まっているんだ、地球滅亡まで…、じゃなかった。大船生活最後の日まであと57日。

よくわからない理由で、突然大船に住むことになったクリムゾン真鍋。しかも謎のカウントダウンが始まる。このカウントダウンは何を意味するのか…。謎はさらに深まっていく。次回は、魅惑の街、大船の魅力に迫る。しかし、クリムゾン真鍋はいったいいつになったら新作デスクリムゾンのストーリーを書き始めるのか。次回に続きます。