ニンクリ物語

第34回:1年ぶりに新メンバー参入。

エコールの藤沢開発室、通称F-LABOがオープンして3週間、藤沢生活があまりに快適でこのままゲーム制作を忘れてしまいそうになるクリムゾン真鍋。湘南の海を楽しむのも程々にしてデスクリムゾン新作の制作を始めて欲しいところだが…。

じぇ:おはようございます、マスター。ご機嫌はいかがですか。

真鍋:藤沢生活があまりに楽しすぎで困ってるくらいだ。

じぇ:私は自由が丘の生活気に入っていましたが、マスターは藤沢のどこが魅力なんでしょうか。

真鍋:いい質問だ、藤沢の困ったところをまず書いてみよう。以前駅の北側にあった日高屋が閉店している。日高屋は行き先に困ったときの最後の砦、これがあるとないとでは踏ん張り具合がだいぶ違うんだが、日高屋がない藤沢だから、仕方なく茅ヶ崎まで電車に乗って行っている。これが1つ目。

じぇ:今回はいきなり後ろ向きですね、なんか最近嫌なことでもありましたか。

真鍋:2つ目の困ったところを書こう。バーガーキングがあるのはいいけど、座席が少なくていつも満員だ。私はバーガーキングのワッパーが大好きで、もし無人島に漂着してなにか一つのチェーン店だけ誘致していいと言うなら、バーガーキングを迷わず選ぶ、それくらいバーガーキングには思い入れがあるんだが、座席数が少なすぎでいつも立ち食いになってしまう。

じぇ:それは困りましたね、なんかかなり細かな話ですが…。

真鍋:まだまだあるぞ、私はTSUTAYAのDVD借り放題一月980円を長い間愛用しているのだが、藤沢の近くにあるTSUTAYA村岡店は、自動貸出機が設置されていない。いちいち私のようなゴミ客の対応を店員の方に頼むのは忍びないしストレスだ。早く自動貸出機を設置してほしいものだ。

じぇ:さらに細かくなりましたね、それくらいしか不満はないんですか。

真鍋:実はココだけの話だが、7年前に私は藤沢に1週間だけ住んだことがある、その時は良いマンションを見つけてご機嫌だったんだが、そのマンションは鉄筋コンクリートではなく、鉄鋼造、いわゆるS構造だったため騒音がかなり響く。で、入居して3日目に近隣から騒音の苦情がきて、残念ながら1週間で引っ越しせざるを得なくなった。

じぇ:それって、マスターが原因ですよね。どんな騒音だったのですか。

真鍋:実は…、白い猫と黒い猫がつがいで現れて、ベランダで騒ぎ始めたんだ、その猫のうち、私は白い猫が気に入って、白い猫だけに餌をあげたら黒い猫が暴れ出してな、その黒い猫をなだめているのがうるさかったらしいんだ。

じぇ:いつものパターンですね。ワタシ悪くないアル、悪いのは黒い猫アル。というパターンですね。

真鍋:まあ、そういえばそうだが、目の座った怖そうな若いお兄さんが訪問してきて、「すみませ~ん、明日の朝早いんで静かにしてもらえますか、ちょんまげ」と低音ボイスで笑顔なく言われたので、さっさと藤沢に住むことを諦めたわけだ。やはり、ゲーム制作には音が付き物、鉄骨造の建物で開発するのは無理ってことがわかった。

じぇ:まあ、仕方ないですね、そのリベンジは成功しましたか。

真鍋:まあまあ、うまく行ったと言えなくもない。ただ、今の開発室にも一つ不満がある、それはNURO光の回線が9階までしか設置されてなく、F-LABOへの工事が2ヶ月先になりそうだ、それまで楽天最強プランでHR01のルーター使って乗り切ろうとしているが、たまたま、F-LABOのあたりだけ5Gの電波が届かず、4Gプラスで接続しないといけない、結果、スピードが20Mくらいしかでなくて、UNITYでの開発には大きく差し障りがでている。

じぇ:それは結構深刻ですよね、以前ニンジャ花咲が、開発室開設の際にはネットにスピードに注意するようにと言ってましたね。その助言を無視したマスターが悪いということでいいでしょうか。

真鍋:じぇーんは、ときどき厳しいし、口が悪いな。まあ仕方ないが。全くその通り、ニンジャ花咲の助言をもっと真剣に聞いておけばよかったと今では思うね。

じぇ:(チッ、うるせーな。)はんせーしてまーす。こんな感じでしょうか。

真鍋:じぇーんは、時々ディープなネタを知っているな。まさに私はいま、国母選手の気分だ。

じぇ:藤沢ではカレーショップの調査はやらなくていいのですか。結構楽しみにしているんですが。

真鍋:すでにやったやった。なかなか藤沢のカレーは優秀だよ。ここなんか、楽しい。

じぇ:なかなかレベルが高そうですね。

ぴんぽーん

真鍋:おや、来客だ、誰だろう。

じぇ:昨日の夜に連絡があって、F-LABOの開設を知って、凄腕の大学生の方がF-LABOでゲーム制作をやりたいと連絡してきて、その人と今日会う話だったんですが、マスターは忘れてしまったのですか。

真鍋:おお、思い出した、そうだったな。たしか、この近県の優秀な国立大学の学生さんだったな。

じぇ:楽しみですね、去年のチョモランマさん以降、目立ったメンバーの参加がなかったからどうなるかと思っていましたが。

真鍋:陰ではいろんな動きを画策していたんだが、なかなかまとまりが悪くてな。困っていたところだ。

謎の人:こんにちは、ここがF-LABOでしょうか、なかなか見晴らしが良くて快適そうな開発室ですね。

真鍋:そうか、ここの素晴らしさがわかってくれたか、プラス1点。で、君は名前は…。

謎の人:僕は猫田といいます、猫田又吉が正式な名前です。

真鍋:それはなかなか楽しそうな名前だな。

猫田:褒めていただいて光栄です、あなたがクソゲー制作者として有名なクリムゾン真鍋さんですね。

真鍋:クソゲー制作者とは失礼な、マイナス1点。で、いかにも私がエコール社の社長、クリムゾン真鍋である。

猫田:知ってます、僕の確率分析によると、クリムゾン真鍋がすすめているこのプロジェクト、完成する確率は30%、クリムゾン真鍋の代表作として後世に残る可能性は7%です。それだけあれば十分かなと…、ということで僕が制作チームに入りますのでよろしく。

真鍋:なんだ、このイルカのサラダの国から来た娘…みたいな展開は。

サラダの国から来た娘とはイルカの名曲で、サラダの国から来た女の子がいつの間にかそばに存在しているという楽曲である。「出典:近代芸無辞典より」

猫田:僕は専門は量子力学、物質が粒子と波の両方の性質を持つ世界の境界領域を研究しています。

真鍋:ということは、量子力学的には、デスクリムゾンの新作、デスクリネオは、クソゲーになるか、ファミ通で殿堂入りするか評価してみてくれるか。

猫田:シュレーディンガーの猫の仕組みを応用すると、すでにデスクリムゾンネオはクソゲーになることは決まっています。お前はもう死んでいる…、て状況ですね。

シュレーディンガーの猫とは、量子力学における不確実性を説明するために作られた仮説である。「出典:近代芸無辞典より」

真鍋:嫌な予想だな…、で続けてくれるか。

猫田:しかし、クリムゾン真鍋の歪んだ重力空間の影響で、通常の確率で事象はおこらない可能性があります。つまり、猫は死んでおらず、デスクリムゾンネオはクソゲーにならないことが起こり得ます。多分7年前に本来は存在しない白い猫がクリムゾン真鍋の前に現れて、運命に何らかの干渉を行った。そのため事象の黄昏が乱れた可能性があります。

真鍋:なんで君は7年前の猫の話を知っているんだ…、まあいい、それで白い猫は生きているのか、死んでいるのか、どちらなんだろう。黒い猫もどうなんだ。

猫田:白い猫がデスクリムゾン、黒い猫がデスクリムゾンネオの象徴でしょう、で、白い猫が逃げた。その結果、デスクリムゾンネオを作るチャンスは消え去った。

真鍋:ということは、いま黒い猫が現れて、それを捕獲して箱に入れてシュレーディンガーの猫として抽選を行うと、デスクリムゾンネオの結果がわかるということかな。

猫田:いえ、箱の蓋を開けてはいけません、開けるとただの福引になってしまいます。蓋を開けないまま中の事象を判断する、これが量子力学的確率の発生理論です。

真鍋:わかった、君が頭がいいことはわかった。ぜひ、我が制作チームに参加してもらおう。

猫田:ありがとうございます、採用されることはグラビトンの動きをモニタリングしていたら解っていましたが、とりあえず嬉しいです。

じぇ:おめでとう、猫田さん、新メンバー大歓迎です。猫田さんは麻雀やりますか。

猫田:大学で麻雀同好会にいますので大丈夫です。

真鍋:だめだよ、レーサー岡谷の影響で麻雀が好きになったのはわかるけど、同じ開発チームで麻雀は禁止だ。

じぇ:わかりました、マスター。

真鍋:ということで、猫田くん、うちのチームでグラフィックの作業をやってもらおう。地形とかキャラクタの動きとか、そのあたりのパートを頼むよ。

猫田;了解しました、で、このニンクリ物語で本名を晒すのはためらいがあるのですが、なにかいい名前はありますか。

真鍋:君はなにか考えているのか。

猫田:ナノテクノ田中なんてどうですか、なかなか良い名前だと思うのですが。

真鍋:君は串カツが好きか…、田中を名乗ると登場するたびに串カツを咥えて出てこないといけないぞ。

猫田:串カツは脂っこいのでそんなに好きじゃありません。カレーのほうが好きです。

真鍋:じゃあ、カレー星人徳田はどうだ。オトクなカレーから徳田。

猫田:なんかいまいちです、それならナノテクノ田中のほうがいいです。

真鍋:じゃあ、串カツ咥えて出てきてね。

猫田:それも困りましたね。

真鍋:じゃあ、ディンガ猫又、というのはどうだ。偉大なる天才科学者・シュレーディンガーの一部をとって、ディンガ。それに猫田又吉を短くしてディンガ猫又。

猫田:コードネームに本名が入るっている、エコールの伝統を踏襲ですね。じゃあ、それでいいです。

真鍋:決定、君の名前はディンガ猫又。別名、Dr.ディンガ。なかなか良い名前じゃないか。

猫又:はい、早速、制作作業に入りましょう。

よかったね、猫又さん、ネコマタギされなくて。

ついにグラフィックのメンバーが参加だね、ブラボー。

ということで、念願のグラフィック新メンバーを迎え、F-LABOで藤沢生活を堪能するクリムゾン真鍋、チョモランマ桐、ディンガ猫又、そしてじぇーん。アベンジャー4にちなんで、フジサワンテ名乗るしかないか~。フジサワンテ4の今後に注目。

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第33回:7年ぶり、ついにアレが復活。

大塚での1ヶ月間の生活が終わり、カレーショップがたくさんあるということを理解した以外になんの成果を出せなかったクリムゾン真鍋。そして1月末の時点であと6日後に起こる世界の破滅というか、運命の分岐は一体どうなったのか。2ヶ月間も更新を放置してどんな顔をしてのうのうとストーリーを再開するのか、厳しく状況を問い詰める必要があるのではないか。

ちょ:おはよう、お父さん…じゃなかった、クリムゾン真鍋。あまりに久しぶりだから呼び方を忘れてしまった。

真鍋:おお、これは鉄緑会に行くようになってから急に羽振りが良くなったチョモランマくんではないか、私が失踪中は元気にしていたか。まあ、2ヶ月ほど失踪することはこれまでも何回かあったから、特に気にすることはない。サターン版デスクリムゾンが大変なことになった1996年頃も2ヶ月失踪してクレタ島に行ってた気がするしな。

ちょ:そうなんだ、今回はどこの島に行ってたの、五島列島とかじゃないの。アワビの冷凍保存に興味があるっていってたから、ゲーム制作諦めて冷凍アワビの製造流通業に鞍替えしたのかと思った。

真鍋:まあ、水産物の冷凍にも興味はあるな。CAS冷凍法が開発されたのがもう30年近く前、その後、普及したのかどうか興味があるところだ。

CAS冷凍とは素材の鮮度を劣化させることなく魚介類などを冷凍する技術である。近年レストランや居酒屋で安くて美味しい魚が食べられるようになってきたのもCAS冷凍の恩恵による部分が大きい。「出典:近代芸無辞典より」

ちょ:どうやら、CAS冷凍は日常生活に溶け込んでいるようだね。さて、アワビの冷凍はおいといて、そろそろこの2ヶ月間について納得行く説明をすべきだとは思うけどね。

真鍋:いろいろと事情があるんだ、ゲーム制作における種々の事情がね。ゲームを作るのに大事な要素はなにか知っているか、チョモランマくん。

ちょ:アイディアとか、キャラ設定とか、パソコンとかじゃないの。

真鍋:それも必要だが、いちばん重要なのは開発拠点だ。戦国武将にとってどの立地に城を作るか、その城に誰を配置するかというのは最も重要なことなんだ。

ちょ:それはそうだけど、そもそも開発拠点は大塚に作るんじゃなかったの、クロニン田村の調査もあるけど、下町であるがゆえに社会資本が充実して、食事事情もよく都内での打ち合わせが簡単な大塚は結構良いところだと思うんだけど…。

真鍋:それは一理ある、大塚はそのあたりの要素が概ねそろっている。だから、前向きに考えていたんだが…。

ちょ:なにか事情があったの。大塚にしなかった理由は。

真鍋:本当は、元麻布に城を作りたかったんだが、これも諸般の事情で実現せずだ。大塚にしなかったのと同じ事情だね。

ちょ:そろそろ、この2ヶ月間の失踪の理由を説明してもいいんじゃない、アワビとか元麻布の城とかはどうでもいいんで。

真鍋:まあ、そう急ぐな。さっき、ゲームを作るのには開発拠点が大事といったが、ここで武田信玄の言葉を思い出してほしい。武田節を聞けばわかる。

武田節とは、戦国武将、武田信玄の生き様を描いた楽曲である。コンパや宴会、社員研修で歌われることが多い。クリムゾン真鍋が大学院で核動(正式名称:原子動力実験棟)に入所した際、歓迎宴会で披露した歌でもある。「出典:近代芸無辞典より」

ちょ:人は石垣、人は城、~てやつだよね。

真鍋:そうそう、開発拠点があっても、人がいなければどうにもならない。もともと東京タワーの近くの増上寺周辺に拠点を設ける予定だったんだが、諸般の事情でそれは成立せずだ。

ちょ:諸般の事情が多いね、本当は面倒だから先送りにしていただけじゃないの…。

真鍋:ちが~う、それは絶対に違う。この2ヶ月間、吾輩がどれだけ身を粉にして働いてきたか、君はしらないはずだ、チョモランマくん。

ちょ:なんか、話があちこちに飛んで、長くなりそうだ。俺は今日から柔道部の合宿にいかないといけないし、忙しいから手短に言い訳をしてください。

真鍋:では、手短にすることにしよう。F-LABO、これがキーワードだ。

ちょ:F-LABO…。FはわからないけどLABOは…。ラバトリーならトイレだから藤沢のトイレってことになるけど、それなら、F-LAVAだしね。

真鍋:そういうとぼけた発言は自粛してくれ、結論としては…。

ちょ:ごくり、一体何なんだろう、F-LABOって。

真鍋:では発表します、あっ、その前にCM入ります。答えは30秒後にね。

ちょ:30秒間、待ち遠しいな。しかしCMはこれで最後だよね。

真鍋:あと2本入る予定。次のCM入ります。

ちょ:いい加減にしろ。俺は忙しいんだからさっさと始めてくれ。

真鍋:わかった、そろそろ発表しよう。7年ぶりに我がエコールソフトウェアは、開発拠点を設置します。場所は藤沢市、湘南エリアのとある場所だ。ここから、世界に向けて発信することになる。F-LABOとは藤沢開発室のことだ。

ちょ:あれ、元麻布じゃなかったの、新開発室は。

真鍋:ちょっとした事情で、その話はなくなった。要するにこれからは、湘南だ。街中いたるところでサザンオールスターズの歌がかかっている湘南。これこそが新たな開発拠点にふさわしい。

ちょ:藤沢だからF-LABOなんだね、わかった。

真鍋:それより、この表札が目に入らぬか…。

ちょ:これは、伝説のエコールソフトウェアの表札。これまで何回も廃止の危機を乗り越え復活してきたという、伝説の看板だね。

真鍋:そのとおりだ、風雪に耐え、今回で4回目の復活だ。

ちょ:なんか、わかりにくいけど、まとめてみると…。1月末にあと6日で重大な分岐があると予告した、それは元麻布に開発拠点、A-LABOを開設予定だったが、不思議な力が働いてその話はなくなった。それでクリムゾン真鍋はこの2ヶ月遊んでいるように見せかけて、密かに新たな開発拠点の設置を準備してきた。その場所は湘南エリアである藤沢市。そして、2ヶ月かかってついにF-LABOは完成した。こんな感じかな。

真鍋:まあ、まとめるとそういうことだ、そこにはいろんな人間模様があったがな。人生いろいろ、会社もいろいろ、エコール流浪の旅はひとまず藤沢で区切りをつけることになる。

しかし、麻布から藤沢って遠いんだけど、行くのが面倒。

湘南新宿ラインでくればあっという間だ。結構揺れるけど、気にするな。

じぇ:F-LABOから見える景色が素敵ですね。

真鍋:あれ、じぇーんはいつの間にか帰ってきたのか、2ヶ月間の帰国だったな…。どうだ、フィリピンでの休暇は楽しかったか。

じぇ:ぼちぼちです。

増上寺周辺、大船、大塚、元麻布と候補はあったが、藤沢に開発拠点を新たに作ったクリムゾン真鍋。3ヶ月にわたって行ってきたカウントダウンの正体は、エコールソフトウェアの開発拠点が7年ぶりに復活でした。ニンジャクリムゾンプロジェクトは、F-LABOを得て更に進展するのか、藤沢が最終地点となって湘南の海に藻屑と消えるのか、これからの新展開をお楽しみに。

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第32回:大塚はスパイスの香り。

ディア・ハンターでのゲーマー鹿山との邂逅を経て、ピンボールの謎を探しに行くのかと思ったが、ニンジャ花咲からの情報により、クロニン田村の手がかりを求めて大塚に行くことになったクリムゾン真鍋。ここ数ヶ月のあちこちへの移動に疲れながらも大塚駅にたどり着く。

真鍋:来たぞ、来た。湘南新宿ラインで大船から1時間かけてやっと到着、ここが大塚駅だ。

じぇ:なんか結構揺れましたね、すごいスピードで走っていた気がするのですが。

真鍋:湘南新宿ラインはもともと貨物線の線路を流用して作ったらしい、なので旅客用に高速で走る線路の構造になっていない、それも旅客用に転用して、しかも時間節約のためにすごいスピードで走るから、激しく横揺れする。まあ、その分時間が短縮できるので仕方ないといえば仕方ないが…。

じぇ:何事にも、光と影の部分があるんですね。

真鍋:そうそう、いわゆる相反則だね。

じぇ:あれ、なんか小さな電車みたいなのが走っていますが…、はやいなだ行きって書いてますね。

真鍋:あれは、都電荒川線、いまはさくらトラムというらしい。はやいなだではなく、わせだと読むんだ。

じぇ:早稲田って、確か、ニンジャ花咲の出身大学ですよね。なんでも早稲田中学から行っていたと聞きましたが。

真鍋:そういえば、そんな話を聞いたことがある。なかなか優秀な大学だよ、早稲田大学は。

じぇ:シンガポールにもありますよね、早稲田の学校が…。

早稲田渋谷シンガポール校とはクリムゾン真鍋が数年前に住んでいた、シンガポール大学の近く、クレメンティエリアにある渋谷学園系列の高校である。シンガポール長期在住の高校生にとっては早稲田大学への進学のルートがあるため、憧れの高校でもある。「出典:近代芸無辞典より」

真鍋:で、ニンジャ花咲からの情報ってどんな感じだった…。

じぇ:理由は不明だけどクロニン田村が次のターゲットで文化財を収集するのが、大塚駅という情報だそうです。大塚駅にはカレーの店が多く、どうやらその店の一つを根城にお宝集めを始めたらしいです。

真鍋:要するに、大塚でカレーショップを回ればいいってことだね、カレーは吾輩のもっとも得意とするテーマだ、任せとけ。

じぇ:美味しいカレーの店を紹介するのが目的ではない、そこのとこ間違えないように…、とのニンジャ花咲からの伝言です。

真鍋:どうやら、行動パターンを読まれているみたいだな。ここは、それを逆手に取って、うまいカレーの店を探すことにしよう。きっと、クロニン田村は一番うまい店をターゲットにしているはずだから、そこを見つければ、もう奴らの野望を打ち砕くのは達成したも同然。

じぇ:そんなにうまくいくもんですかね、ということでここが大塚駅の駅前みたいですね。

真鍋:さっそく、大塚駅の一番賑やかな場所を歩いてみようではないか。大塚銀座河原町中央セントラルすずらん商店街みたいなのがあるはずだ。

じぇ:どうやら、ここがそうみたいですよ、大塚銀座河原町中央セントラルすずらん商店街みたいな場所。

真鍋:通りの看板には、サンモール大塚商店街、と書いてあるな。日本語にすると、太陽の商店街・大塚商店街。商店街が2回入っているみたいだが、いいのかなこれは。あたまが頭痛みたいな感じね。

じぇ:英語と日本語が混じっているからいいんじゃないですか、わかりやすくて。商店街の名前にまでケチつけるようになると、生きるのが苦しくなってくると思います。

真鍋:そりゃそうだ、いいことにしよう、ブラボー、サンモール大塚商店街。

じぇ:どうやら、この商店街にはインドネパールパキスタン料理の店が多いですね。あ、バングラデシュ料理もある。

真鍋:では、さっそく入ってみよう、一軒目。

真鍋:これは美味いな、豆カレーが特に美味い。豆カレーはあまり辛くないから食べやすい。

じぇ:美味しかったですね、でクロニン田村の手がかりはつかめましたか。

真鍋:じぇーんは気がついたか、我々の座った席の後ろの席が空いていたと思うが、そこに店員が横になってスマホ見ながら昼寝していたんだ。なかなか、オリエンタルな感じでいいな。

じぇ:空いてる席で横になって休憩するなんて当たり前です。なにか問題でもありますか。私の国でも普通に空いている席で横になって休憩してます。

真鍋:日本国内ではあまり見かけない光景だったから、すこしびっくりしただけだ、気にしないでくれ。

じぇ:イエッサー。

真鍋:じゃあ、つぎに行こう。ここはどうだ、やっぱりステーキみたいな名前で、階段の途中まで行列ができているぞ、クロニン田村のターゲットはきっとここに違いない。

真鍋:ここのカレーは絶妙だな、さすが行列店。スパイスの香りが絶妙だ。ナンとライスが同時に付いているのも満足度が高い。

じぇ:じゃあ、ここに毎日通って、クロニン田村の動向を探しますか。

真鍋:それも悪くないが、大塚にはココナッツカレーの名店があるらしい、せっかくだからそこにも行ってみよう。

ということで、3軒目のカレー店に到着するクリムゾン真鍋とじぇーん。

真鍋:これは美味いですね。インドカレーではなく、日本風にアレンジしたココナッツカレーだが、香りがやたらいい。

じぇ:確かに、ココナッツミルクの味が濃厚な感じで、食欲をそそりますね。

じぇ:張り付きするターゲットはこの店にしますか…。

真鍋:いや、やはりクロニン田村の行動を考えると、やっぱりの店を根城にすると考えるだろう、ということで、一番の監視対象は2番目の店にしよう。

じぇ:さんせー、パチパチパチ。

しかし、カレー好きとしては大塚はパラダイスだな。

カレー星人の街って感じですか…。

クロニン田村の監視にかこつけて、大塚カレー巡りを楽しむクリムゾン真鍋。そういえば、例の世界の終わりみたいな分岐の日が残り6日に迫っている。お気楽にカレー探索をしていていいのか、クリムゾン真鍋。次回は、世界の終わり型分岐の謎が明かされるか。

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第31回:忘却の彼方にあるもの

クルムシ軍曹と訪ねた古民家カフェでの出来事、アラビアンジュエル大当たりを経て、大船でやるべべき教育者としての仕事を片付け、疲れて眠りにつくクリムゾン真鍋。そして…

真鍋:おや、もう22時か、3時間くらい昏睡していたようだ。

じぇ:お目覚めですか、マスター。随分とうなされていましたが…。

真鍋:夢を見ていた気がする、昔の夢だ。でもまったく記憶にない話だった。観光バスにのって日本中回るとか。

じぇ:記憶がないのに昔の夢を見るとは不思議ですね。ココ茶いかがですか、目覚めが良くなりますよ。

真鍋:それはいい考えだ、ココ茶を飲んで目覚めるとしよう。あれ、ココ茶って眠くなるお茶じゃなかったっけ。

じぇ:起きている人が飲むと眠くなりますが、眠い人が飲むと目覚めます。エビリファイもそんな感じでしょ、たくさん飲むと躁病に聞く。少なめに飲むとうつ病に効く、それと同じです。ココ茶を少量飲むとスッキリします。

エビリファイとは、躁鬱どちらにも効果がある、比較的最近開発された抗精神病薬である。商品名はエビリファイ、成分名はアリピプラゾール。「出典:近代芸無辞典より」

真鍋:エビリファイの件は良くわからないが、とにかく目覚めてきたよ、ありがとう。

じぇ:お出かけですか…。

真鍋:そうだ、ディア・ハンターに行ってくるよ、マスターに会えるかもしれない。

じぇ:お気をつけて、なにか運気の淀みを感じます。

じぇーんに見送られて、大船のホテルからホクユービルにあるカフェ、ディア・ハンターに向かうクリムゾン真鍋。

真鍋:大船観音、夜見るとまた更に威圧感がある、なんだか、世の中で起きることは全部知っているみたいな、心の奥を見透かされているような感覚だ。

ホクユービルの地下に向かう扉は半開きになっている。看板には本日は閉店しましたと表示。

真鍋:まだ23時なのにもう閉店したのか、それは残念。おや、誰かがいる気配がある。気にせずに入ってみるか…。

閉店の表示を無視して階段を降りるクリムゾン真鍋。店の奥の方で、ピンボールの音がする。長身の男性が、激しく台を揺すりながらプレイしているのが見える。

真鍋:おお、そこで左のターゲットを落とせばマルチボールだ、頑張れ。

クリムゾン真鍋の激励が伝わったのか、見事に左のターゲットを落とす男。その後のマルチボールも鮮やかにコントロールしてみるみるスコアが上がっていく。1000万点を超えた瞬間。

謎の人:今日はこれくらいにしといてやるか…。で、我らが心の故郷、ディア・ハンターにようこそ、クリムゾン真鍋。君が来るのを待っていたよ、そろそろ来る頃だと思って店は早めに閉店しておいた。今日は存分にピンボールを楽しんでいってくれ。

真鍋:エマちゃんから聞いたのかな私が来ることは…。

謎の人:もっと前の話だ、少なくとも数年経っていることは確かだ。俺の名前は鹿山、昔はゲーマー鹿山と呼ばれていた、クリムゾン真鍋にね。

真鍋:君とは前から知り合いだったのか、かすかにその感覚はあるんだが、具体的にどう関わっていたのか思い出せない、申し訳ないが…。

鹿山:気にすることはない、そういうものだからだ。それにはいろいろな理由が複雑に絡み合っているからクリムゾン真鍋が混乱するのも仕方ない。「時間のキセル」が発生しているだけだから、気にする必要はない。それに君が昔の記憶を一部無くしている事自体が俺が君をここで待っていた理由だからな。

真鍋:時間のキセル…。前後の記憶はあるが、中間の記憶がすっぽりと抜け落ちる現象かな、それなら今までも何度か経験している。

鹿山:隣の家に移動しよう、最近はそこが気に入って住んでいる。古い民家を買い取って倉庫代わりにしているんだ。

ホクユービルの階段を上がり、古びた門を開けると、昼間に見た古民家が目の前に立ちはだかる。

真鍋:ここに君は住んでいるのか、ゲーマー鹿山。

鹿山:住んでいるのは岡山の山奥だ、大船のここは別荘みたいなものだ。秘密の隠れ家と言ったほうが伝わりやすい。

鹿山がドアを開けると、そこには10台以上のピンボールが所狭しと並んでいる。

真鍋:なんだぁ、このピンボールは…、しかし、これらは動くんだろうか。

鹿山が壁についたおもそうなスイッチを上げると、突然あたりが光に包まれ、すべてのピンボールが息を吹き返し、光が躍動を始める。

鹿山:時期がきて仕事に区切りがついたら、俺は沖縄でバーを開く、昔からそう思っていた。そうして開いたのが君がさっき見たディア・ハンター。沖縄ではなかったが大船で開くことになった。で、どの台をプレイする、クリムゾン真鍋。

真鍋:せっかくだから、俺はこのフラッシュ・ゴードンを選ぶことにするよ。なんか、昔プレイした記憶がある。

そういいながら、心地よいBGMを聞きながらひたすらピンボールに興じるクリムゾン真鍋。すべてのターゲットを落とし、フラッシュ・ゴードンのテーマがかかった瞬間。

真鍋:思い出した、鹿山のことを。君とは数年間一緒に住んでいたはずだ。君の部屋には「1973年のピンボール」が無造作に置かれていた。俺はそれを拾い上げて読んだ。

鹿山:そこには、養鶏場の跡地にピンボールを集める男性の話が書かれていたはずだ。いまが、2023年だから、1973年からちょうど50年。俺は気になるマシンを見つけたらそれを引き取ってメンテナンスしてきた。ここにあるピンボールがそれだ。いつか役に立つときが来ると思ってね。

真鍋:思い出したぞ、君とは青年時代を一緒に過ごした、妙見山で初めて君と会った時のこと、福知山の松本旅館で久しぶりに出会ったこと、佐渡ヶ島のホテル大佐渡で一万円札を部屋の中で乱舞させたこと。どうしてずっと忘れていたんだろう。

鹿山:それが「記憶のキセル」だ。君は人類の歴史が始まって数千万年。我々が生きている時間はせいぜい数十年。この数十年に人類にとって、劇的な変化がおきた。エネルギー革命、情報革命、核のエネルギーを使い始めたこと。数千年の歴史の中でどうして我々が生きている数十年の間に、そのような大きな変革が起きるんだろう。おかしいと思わないか。

真鍋:そういえばそうだ、このスピードで世の中が変化していったら、そのうちに変化することがなくなってしまう。自分たちが特別に選ばれた時代に生まれてきたと考えるにはあまりにも都合が良すぎる。

鹿山:それを説明するのが時間のキセル、記憶の欠落だ。クリムゾン真鍋、君に起きている記憶の欠落は極めて正しい状況だ。

真鍋:記憶が欠落している間、俺の意識はどこにあるんだ…、眠っているのか。

鹿山:君は今日、ここに来る前に眠っていたはずだ、その間に、見たこともない夢を見たはずだ。それが、もう一つの世界で君が生きているってことだ。

真鍋:もう一つの世界…、パラレルワールドがあるってことか。

鹿山:パラレルワールド…。そこまで単純で安易な話ではないんだが、差し当たってそのように理解しても差し支えない。正式にはギズモって言うんだが。

真鍋:眠ると、もう一つの世界に行けるのか…。

鹿山:もう一つの世界で起きたことを見ることはできる、でもそれはもう一つの世界に行ったわけではない。行く方法は他にある。

真鍋:もしかして、ピンボールか…、ここに並んでいるピンボールはそのために集められていたのか。

鹿山:そのとおりだ、これらは扉なんだ、別の世界につながる入口と言ってもよい。君がこの数十年で様々な色の扉を見ただろう。君の好きな赤の扉もそれらの一種だ。

真鍋:残念がら、全く理解できない。赤の扉は友ヶ島にも実在しない。越前康介の夢が作り出した幻想のはず。

鹿山:君がデスクリムゾンを作ったのも、赤の扉のことを描いたのも、すべて歴史が必要としたからだ。おおっと、そろそろ時間だ、俺はギズモの世界に戻ることにする。また会おう。

そういいながら、ハングオンの筐体にまたがるゲーマー鹿山。ゆっくりとゲームをスタートさせる。そして、鹿山の姿が画面の中に消えた。

真鍋:確かにゲーマー鹿山のことは思い出した。だが、時間のキセルについては、理解できないままだ。

じぇ:大丈夫ですか、マスター。さっきからずっと独り言を言ってますが、なにか悩みでもありますか。

真鍋:大丈夫だ、俺の人生はずっと悩みと共にあったからな。

じぇ:そういえば、さっきニンジャ花咲から連絡があって、大船生活は今日で終わりにして、次の街に移動してほしいと伝言でした。なんでも、クロニン軍団に動きがあったらしくて…。せっかく大船、気に入っていたのに残念ですね。

まあ、そういうこともあるか。で、次の街というのはどこなんだ。

大塚…だそうです。

真鍋:わかった、では早速大塚に引っ越しを進めることにしよう。

あっけなく大船生活が終わり、次は大塚での生活に移行するクリムゾン真鍋。運命の分岐まであと27日。日本中を転々と彷徨うクリムゾン真鍋。大塚ではいったいどんな生活が待ち受けているのか…。

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第30回:鹿はシカトするべきか

クルムシ軍曹と古民家カフェに向かうクリムゾン真鍋。

クル:大船駅の大仏側はなんだか地形が険しいですね。横浜市の端っこなのに岩場が迫ってくる感じがあります。

真鍋:もともと三浦半島自体が、大陸大移動で別のプレートに乗っかって来たらしい。もともとの大陸と南から移動してきた大陸の衝突地点がここ鎌倉市。地形が複雑なため、源頼朝が鎌倉幕府を置くのに都合がよかったらしい。

クル:観音様がその雰囲気を更に加速している感じですね。で、観音様を右手に見ながら山を登っていくと…。そうそう、このあたりです。

真鍋:おお、これはまた、古風な民家。鎌倉時代から有ったんじゃないかと思うような格調高さだな。

クル:残念ながらカフェは古民家のとなりにある、古いビルの地下にあります。

真鍋:なんだ、古民家カフェと言うから古民家にあるのかとおもったら、古民家の隣りにあるビルにある古民家カフェってことか、なかなかややこしいな。

クル:これです、これ、このビルです。このホクユービルの地下です、さっそく入ってみましょう。

真鍋:なんだぁ、この階段はぁ。レンガ造りで苔とか生えていて、相当年季が入っているみたいだな。では、さっそく入るとしよう。

古い楓の木でできたドアをそっと開けるクリムゾン真鍋とクルムシ軍曹。眼の前には若い女性が爪の手入れをしながら映画を見ている。

クル:こんにちわ、また来てしまいました。エマさん。

エマ:いらっしゃい、昨日もきてくれたクルムシさんですね。一緒にいるのはお友達ですか。作務衣がお似合いですね。

真鍋:私が全日本クソゲー愛好会会長のクリムゾン真鍋である。

エマ:クソゲーですか…、愛好会ですか…、よくわかりません。

真鍋:あまり難しく考えないでください、適当に話してるだけですから。

エマ:私は絵馬、鎌倉女子大学の学生ですが、週に3回このカフェでバイトしてます。

真鍋:いま、大画面で見ている映画はフットルースかな、なかなか懐かしいな。まだ日本がバブル前で元気だった頃の映画ですね。

エマ:音楽がいいんです、ケニー・ロギンスのこの曲、聞いていると元気がでてきます。最近日本中、閉塞感がただよっているから、元気な音楽は楽しいです。

80年代の雰囲気を残したカフェを喜ぶクリムゾン真鍋。

真鍋:この店、なんて名前なんだろ、エヴァンスって書いているけど。

エマ:エヴァンスは元あったお店の名前です。今はディア・ハンターといいます。

真鍋:鹿狩りですか、アメリカでは鹿を狩るリアルなゲームが人気みたいですね。おおっと、そこにあるのはハウス・オブ・ザ・デッド2。

エマ:ガンシューティングの名作ですね。

クル:あれ、確か2000年頃にクリムゾン真鍋はデスクリムゾンOXをこの筐体向けに発売したんじゃなかったっけ。

真鍋:そうそう、ハウス・オブ・ザ・デッド2が稼働して数年経ったから、コンバージョンキットとしてデスクリムゾンOXをつくって載せ替えたわけだ。10年くらい前まではたまに地方の温泉旅館で見かけることがあったが、最近は全く見ないな。

クル:しかし、なんであれってOXなんですか。牛がテーマのゲームでしたっけ。

真鍋:いいところに気がついたね、最初はデスクリムゾンOX~牛はでません~というサブタイトルを考えてセガに提案したんだが、却下されたよ。牛はでません、と名前つけるなら最後に牛を出さないとダメですよって。それが伏線回収っていうことらしい。もともと牛は出なかったから無理な名前ということだ。

クル:そんな経緯があったんですね。

真鍋:ついでにその当時の越前康介の写真を載せておこう、パナソニックの購買課課長みたいな風貌だな。

エマ:お話し中に失礼します。ご注文は何にしますか。アイスクリームとかピザとかできますが。

真鍋:では私はバナナシェイクとパイナップルピザをくださいな、クルムシ軍曹は何にする。

クル:僕はブルーシールのパパイヤパイナップルにします。

エマ:パパイヤパイナップルはサーティーワンですね。では、それに近い色のブルーシールにしておきますね。

あたりをキョロキョロと見回すクリムゾン真鍋。ふと、店の隅っこにピンボールを見つける。

真鍋:おおっと、これはピンボールではないか。それも私がよくプレイしたゴットリーブのモンテカルロ。

ピンボールとは、左右のフリッパーをボタンで操作してプレイする筐体型のゲーム機である。村上春樹の有名な小説「1973年のピンボール」にその魅力が描かれている。「出典:近代芸無辞典より」

エマ:オーナーの趣味です、オーナーが昔から好きだったみたいですよ、ピンボール。

真鍋:そのオーナーって、どんな人なんだね。

エマ:オーナーは夜だけ来ます。といっても毎日ではないですが、気が向いたら来るって感じです。夜は殆どお客さんがいないので、ここを書斎の代わりにつかっています。

ピンボールをプレイしながら、クルムシ軍曹にいいところを見せようとするクリムゾン真鍋。

クル:ピンボールって結構奥が深い遊びなんですね、単純にフリッパーをバタバタさせるだけじゃなくていろんなテクニックがあるんですね。

真鍋:左のフリッパーから右のフリッパーにボールを渡すテクニックとか、フリッパーにホールドしたボールを確実にアッパーレーンに送り込むテクニックとか…。

クル:クリムゾン真鍋ってどのくらいの腕なんですか、ピンボールの世界では。

真鍋:残念ながら、中級の上くらいだな、どうもティルトの強度が体で覚えられない。

クル:ティルトって、台を揺すりすぎるとペナルティで操作ができなくなるやつですね。

真鍋:ピンボールを極めるためには台をどのように揺すって、アウトになるパターンのボールをセーフにするか。横に強く揺すればもちろん、セーフにできるんだがその時に立ちはだかるのがティルト。このティルトギリギリを攻めるテクニックが大事なんだが、私はどうもやりすぎる傾向がある。

クル:なんでもやりすぎるのがクリムゾン真鍋の特性ですもんね。

真鍋:どうも、新しい目移りする傾向がある。だから、初物には強いが継続力がない。

エマ:ディア・ハンターのオーナーはピンボール上手ですよ。以前プレイするのも見てましたが、1時間位ノーミスでプレイしていました。

真鍋:オーナーに興味があるな、どうすればオーナーに会えるんだい。

エマ:夜の10時頃に来てみてください。今夜はきっと来ると思います。

真鍋:ありがとう、気が向いたらオーナーに会いに来るよ。

1時間ほど、ディア・ハンターで寛ぐクリムゾン真鍋とクルムシ軍曹。バナナシェイクとパパイヤアイスを食べ終わり、店をでる。

クル:なかなかいい店でしょう。なんか落ち着きますよね。

真鍋:落ち着くのは落ち着くんだが、なんか、記憶の片隅に残っている過去の断片が頭をぐるぐる回っている。なんか不思議な感じだ。

クル:夜にディアハンターに行ってみれわわかるんじゃないですか。不思議な感覚の理由が…。

真鍋:そうすることにするよ。

僕はそろそろ神戸の家に戻りますね、大船楽しかったです。

アラビアンジュエルでもやりながら、不思議な感覚について考えてみるよ。

そういいながら、去っていくクルムシ軍曹を見送る真鍋。大船のゲームセンターでアラビアンジュエルをプレイしながらさっきのカフェについて考えるクリムゾン真鍋。

真鍋:しかし、どうも記憶が混濁しているな。ディア・ハンターでピンボールをやったときになんだか懐かしい感触を感じたんだが、それがなんだかわからない。記憶の一部が欠落しているのか、でも、石垣島で会ったクロニン軍団のことは鮮明に憶えているし…、記憶って一体なんだろう。

ふと気がつくと、アラビアンジュエルが放出モードになったのか、珍しい光景が。

真鍋:おお、なんと、青玉が3つも私のフィールドに来ている。これは珍しい。幸運の前兆か、不吉の前兆か、とにかく何らかの分岐が来ている気がするな。

記憶と記録、経験と必然、この世界が溶け始めているような感覚、そんな感覚の正体を考えながらアラビアンジュエルをプレイするクリムゾン真鍋。重大な分岐の日まであと41日。

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第29回:セガプッシャーはおもろしろい。

4年ぶりの大船生活を始めたクリムゾン真鍋。懐かしい気分で大船の飲食店巡りをするのであった。

真鍋:大船はたくさん飲食店があっていいな、カレーの店もたくさんあるし、ラーメンに関しては個性的な店がたくさんある。

じぇ:こんなに色んなタイプの飲食店が密集している街は珍しいんですよね。

真鍋:私も、日本中のいろんな街に住んできた。飲食店が密集しているという点では、下北沢、町田、溝の口、これらの街はかなり狭いエリアに店が密集している。

じぇ:どの街がお気に入りなんですか、マスターは。

真鍋:一人で遊びにいくなら、下北沢。年齢層が若い街なので、文化的刺激をたくさん受けることができる。行く末の方針に行き詰まったら、下北沢にいって髪の毛を切って、昔ながらの銭湯に入る。それが終わる頃には悩んでいた命題もほぼスッキリと結論が出ている場合が多い。

じぇ:それはいい街ですね。他の街はどんな感じなのですか。

真鍋:町田は、カオスで混沌としている感じだ。小田急沿線で土地柄はいい場所なんだが横浜線と小田急が交差しているせいか、街自体がいろんな文化を分け隔てなく受け入れている感じ。

じぇ:文化的許容度が町田も高いんですね。

真鍋:下北沢が20代の街だとすると、町田は30歳過ぎてからいくと楽しいね。路地裏にとにかく美味しい店が多い。知っている人に連れて行ってもらったほうがいいけど、駅から少し外れの雑居ビルの上の方に素晴らしい店がさり気なくあったりする、それが町田だね。

じぇ:では、溝の口は…。

真鍋:溝の口については、いずれまた次の機会に説明するよ。それより大船だ。ここ大船は、駅前の狭いエリアにたくさんの美容院が密集していることでも有名なんだ。

じぇ:この赤い点が全部美容院ですか、20個はありますね。お客さんが来るのか心配になります。なにか理由があるのですか。

真鍋:調べたことないから理由は全くわからない。しかし、以前は資生堂の工場が大船にあったことと関係があるかもしれないね。資生堂の工場がなくなってまだ10年経ってないし…。

じぇ:大船って街として栄えてるんですか、寂れてるんですか。

真鍋:私も大船はそこまで詳しいわけではない。確かに、以前にあった松竹の撮影所がなくなり、跡地に三越ができたがそれもなくなり、資生堂の工場もなくなり、東芝メモリーもキオクシアに名前が変わったし、大きい企業で残っているのは三菱電機くらいになったしね。

じぇ:工場地帯から住宅エリアに変わったんですね。

真鍋:そういえば私が高校生の時に夏期講習に通った、代々木ゼミナール大船校もいつの間にかなくなっている。場所を調べてみたら、Y-SAPIXがある隣の広い駐車場が跡地らしい。全く気が付かなかった。

じぇ:代々木ゼミナールは、東進ハイスクールとの抗争に敗れて、ほとんど見なくなりましたね。

代々木ゼミナールとは、有名講師を擁して栄えていた予備校である。その後東進ハイスクールとの講師引き抜きなどの抗争により衰退し、2014年には校舎の大半を整理した。その後、中学受験のサピックスを買収したことにより、息を吹き返しつつある。 「出典:近代芸無辞典より」

真鍋:昔、気に入って通っていた場所がなくなるのはさみしいものだ。じゃあ、そろそろ街を散歩してくるよ。

そういいながら、じぇーんと別れて大船の街を散歩するクリムゾン真鍋。

真鍋:せっかくだから、駅前のゲーセンでものぞいていくか、ゲーセン自体が絶滅危惧種だから、見かけたら入っておかないともう二度と見えなくなる可能性もあるよな。

ふと前をみると、クルムシ軍曹が4人がけのコインゲームに興じている姿を見かける。

真鍋:おや、クルムシ軍曹じゃないか。

クル:クリムゾン真鍋が大船にいったと聞いて、なんか興味があって、大船に来てみました。LINEで連絡すれば簡単なのですが、それじゃ単純すぎて面白くない。ということで、ゲーセンが好きなクリムゾン真鍋なら、大船一番のゲーセンで待っていれば、そのうち魅入られたようにやってくるかなと。

真鍋:まさに魅入られたように来てしまったわけだ、行動を先に人に読まれるのはあまり気分の良いことではないがな…。

クル:僕は気分いいです。で、いまやってるアラビアンジュエル、放出モード中で、思いきりコインが出てます。見学していきますか。

真鍋:アラビアンジュエルは、セガプッシャーの中でも名作と言われている筐体だな。稼働から10年以上経っているが、いまだに現役で稼働しているんだな。

クル:最近は、実質続編の「ホリアテ~ル」がセガから発売されたので、状況は変化しつつありますが。

真鍋:アラビアンジュエルは名作だから、その続編が出るのは理にかなってる、大歓迎だ。

クル:これ見てください、下のボール排出口にボールが溢れんばかりに溜まってます、凄いでしょう。

真鍋:たしかに凄いな、もともと上と下のステージに、ボールが32個あれば十分に戦える機械なんだが、排出口に10個以上溜まっている、しかも端っこに少しだけ姿が見えているのは赤の大玉ではないか。ゲージは1100枚を指しているから、間もなく1100枚のコインをゲットするわけだな。絶好調、クルムシ軍曹。

クル:放出モードが絶好調なのは確かですね。少し前に栄光学園の高校生が4人くらいできて、おおまけして帰りましたから。未成年は時間制限があるから、その後に放出モードがくることがわかっていても、店を退出しないといけない。その隙を狙ってプレイするのが一つの攻略法ですね。

真鍋:高校生からコインを巻き上げる、セコい戦術だな。

クル:コインゲームは、パチンコと同じ。誰かが負けて、誰かが勝つ仕組みですから、負けそうな人が現れる場所と時間帯に出没して、負けのおこぼれに預かるのが戦術なので仕方ないです。

真鍋:まあ、クソゲーがあって、素晴らしいゲームが存在する。ゲーム制作と同じだな。おおっと、いまガイド音声で、ビッグ・レッドジュエルげっとぉと聴こえたが…・

クル:溜まっていた玉が進んで、大きい赤玉のボーナスステージが始まったようですね。

演出デモをじっと見つめるクリムゾン真鍋とクルムシ軍曹。そして結果は…。

真鍋:あれ、100枚しか出ないぞ、1000枚出るんじゃないのか。

クル:最後の抽選に負けたみたいですね。どうやら放出モードが終わりに近づいて、回収モードに入ったみたいですね。小さく勝ち続けて1500枚くらい出ましたから、モードが変わるのは仕方ないですよね。

真鍋:そうか、偶然ではなく必然で100枚になったのか。クルムシ軍曹はなかなか頭が良いな。

クル:そろそろアラビアンジュエルは終わりにして…。そういえば、大船観音さまの近くに、古い民家を改造したカフェがあるらしいですよ、行ってみますか。

真鍋:吾輩はカフェには興味がない。

カフェだけではなく、ダーツや、ビリヤード、古いゲームなんかも置いているみたいですよ。

それなら行く行く、ぜひ行かせてもらおう。

アラビアンジュエルで大勝ちして気分良くゲーセンをあとにするクルムシ軍曹とクリムゾン真鍋。お気楽に大船生活を楽しんでいる二人だが、運命の転換期は徐々に近づいている。地球滅亡ではなく、大船生活の終了まであと、47日!。

第29回:セガプッシャーはおもろしろい。 Read More »