気がつけばもう9月、驚異的な暑さの8月にもかかわらず、連日ゲーム開発のプログラムに悪戦苦闘するクリムゾン真鍋、暑さにやられて不規則発言が増えるのが心配だが…。はたしてゲームの開発は順調に進んでいるのか。
じぇ:毎日暑いですね、この8月の暑さは異常です、フィリピンでもここまで暑い日はめったにありません。いったいどうなったんでしょうね、日本国は。

真鍋:何十年も前から言われてきた地球温暖化が確実に進んでいるだけだろ、だから私は何十年も前から原発をもっと増やすべきだと思っていたんだが実際には稼働している原発の数は30年前から比べると半分になっている。これじゃあ、暑くなるのは当たり前だ。
じぇ:マスターは原発推進派でしたね、それはそうと、もうすぐハンターが異世界に行って1年ですね。確か去年の10月くらいに沖縄の灯台から異世界に旅立ったはずですが…
真鍋:あちらの世界で元気でいてくれればいいんだが…
じぇ:そういえば、昨日ハンターさんから手紙が来てましたよ。名前が書いてないので誰からわからなくてそのまま放置してましたが、あの字にはそういえば見覚えがあります。
真鍋:そうか、無事にあちらの世界から帰ってきたみたいだな。確かあちらの世界はカルボニアって言ってたっけ、どれどれ、中身を確認すると…
竜田:「手紙」ひさしぶりやんけ、もう沖縄旅行から1年がたったやんけ、ということはクリムゾン真鍋がいなくなって1年だが無事に帰ってきたのか。気になって手紙書いてみたが、気が向いたら返事するやんけ。

真鍋:おかしい、私はどこにも行っていないぞ、そもそも1年前に沖縄で黒豚の子供と一緒にあちらの世界に旅立ったのはハンター竜田だろう、この手紙によるとあちらの世界に旅立ったのは私だと言ってるがいったい何が起きたんだろう。
じぇ:あの事件からもう1年なんですね。のんびり沖縄旅行にいくつもりが竜田さんが行方不明になるとは大変なことになりましたが、この手紙からだと理由がわかりません。
真鍋:なかなか不気味な話ではあるが、この手紙自体が誰かのいたずらかもしれん。根本に立ち返って考えてみよう。
じぇ:マスターは確か、ハンターの実家をご存じでしたね。古井戸とか古い蔵とかがある実家。そのハンターの実家を訪ねてみたらどうなるんでしょうね、行方不明の人として捜索願が出ているかもしれませんが。
真鍋:まあ、その問題に首を突っ込むと、せっかく順調にきているデスクリムゾンの新作を開発するというプロジェクトが頓挫してしまう、あまり関わらないほうが得策だ。
じぇ:なんか冷たい…
真鍋:そういうものだよ、じぇーんくん、縁があれば涅槃でまた会えるだろう。
せっかくのハンター竜田からの手紙をそっけなく扱うクリムゾン真鍋。暑さのあまりに思考力がなくなっている気配がする。
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じぇ:この前のニンクリ物語では東京湾観音に行きましたがあれが6月、あっという間にもう三か月も経過しましたね。
真鍋:じぇーん君は行っていないだろう、たしか宗教上の理由で参加しなかったはずだ。
じぇ:レポート読みましたから状況は把握しています。
真鍋:月日の経つのは早いものだ、このデスクリムゾンネオのプロジェクトももう始めてから3年、いままでにない長期間のプロジェクトになっている。
じぇ:香港でのんびりしていたマスターが、社会復帰してもう3年になるんですね。
この3年間の開発の履歴を思い出しながら、物思いにふけるクリムゾン真鍋。
ぴんぽーん、元気よく呼び鈴がなる。時計を見るとちょうど朝の10時。
猫又:おはようございます、いろいろ用事がたまっていてお休みしていましたが、今日から本格的に復帰です。
真鍋:おお、猫又くんか、久しぶりだな。これ以上ヨハネスブルクに旅立つ奴が増えると困るところだったが、無事に帰ってきてよかった。で、いろいろな用事は片付いたか。復帰した勢いで、予定通り9月末まで全力でデスクリムゾンネオの開発を進めることにしよう。
猫又:賛成です、で、僕が1か月の休暇の間に何か進捗はありましたか。
真鍋:あるといえばある、全体のゲームシーケンスを作ったのだが、デモループを12回くらい回すと不自然なフリーズが発生して困っていたところだ。
猫又:不規則なフリーズに悩まされるとは、開発もいよいよ終盤ですね。
真鍋:そのとおり、で、プログラムを徹底的に見直したらいくつか危険なバグの芽が発見されたんだが、それに対策をしても、頻度は減ったが4時間に一回くらいのフリーズがまだ取り切れていない。
じぇ:4時間に一回くらいフリーズするのは問題ないのではないでしょうか。
真鍋:スマホゲームだから、アーケードゲームのように、店舗の営業時間である18時間ずっと正常に稼働することが求められているわけではないが、このような不自然なフリーズを放置すると後でひどい目にあることは間違いない。

じぇ:時々フリーズするのはデスクリムゾンの特徴、心が温かなクリムゾナーの人は見逃してくれるのではないでしょうか。
真鍋:クレームは来ないだろうが、話のネタにされるのも嫌だな。それにファンの恩情にすがったゲーム制作はやりたくない。それくらいなら、私は潔くマウスを置く。
猫又:とりあえず、僕は新しいキャラモデルの制作を始めます。それに長期間、洞窟に閉じ込められていたハチコウのデータも作らないといけませんね。
真鍋:ハチコウ、ああ、八並康の話ね、確かエルミで鉱山に放置されてそのまま25年近く経過したはずだが、もしリアルタイムでハチコウが年をとっていたらいまは40歳を超えている計算になる。

猫又:念のために40歳のハチコウを作っておきます。渋いイケおやじみたいな感じでいいですか、それともエルミで鉱山の中に生息する巨大コウモリを食べすぎたせいで小太りのおじさんになっているほうがいいですか。
真鍋:小太りのおじさんになったハチコウは必要ないだろう、ハチコウはあれはあれで微妙に人気があるんだ、やはり冷凍睡眠か何かで当時と同じ年齢という設定のほうが良い気がする。
猫又:了解です。
真鍋:当時のデータをそのまま使えばいいんじゃないか。3Dスタジオマックスのデータがあるはずだ。
猫又:実際にそれを使おうして調べてみたのですが、当時と3Dスタジオマックスのバージョンが大きく変わっていて正常に読み込めないようです。当時はまだFBXというデータ形式もなかったですし…。
真鍋:そんなものかな、それは面倒な。
猫又:それに、2000年ころ主流だった3Dスタジオマックスもいまではすっかり影が薄くなりました。2000年代に入って、Mayaが徐々にモデリングソフトの主流になってきて、さらにUNITYの発展とともに、3Dスタジオマックスの操作に似たブレンダーというソフトがでてきて、これが無料で使えるようになったことで世の中大きく変化してしまいました。
真鍋:そうか、私が最前線で3次元モデルを作っていたときはソフトイマージが主流だったが、いまでは大きく変化して、3Dマックス全盛時代、それからMayaが台頭してきてそれもいいまではブレンダーにとって代わっている。なかなか世の中の移り変わりは激しいものだな。
猫又:ということで、ハチコウのデータは使えません。2010年くらいにハチコウのデータを3Dスタジオマックスで読み込み、FBX形式にしておけば問題なかったのですが、いまではそのころのバージョンの3Dスタジオマックスは入手できません、そもそも、WindowsがVistaとかなので、動くマシンが手に入らないと思います。
真鍋:要するに古いデータを使うのはなかなか厳しい状況なわけだな…、私の抱えているプログラム部分の深刻なフリーズ、古いデータの互換問題、細かくややこしいことが多くなってきた。
じぇ:だいぶ心が病んでいますね、気分転換にどこか旅行でも行きませんか。
真鍋:それはよいことだ、私は以前から2025年になったら、四国の八十八か所巡り、お遍路の旅を始めようと思っていた。ちょうどよい機会だからお遍路に行ってくるか、猫又くん、一緒に行くかい。

猫又:僕はハチコウのモデル制作が忙しいので一緒には行けません。
真鍋:なんだ、じゃあ、クルムシ軍曹でも誘っていくか、確か先日話をしたところではまあまあ暇そうだったし。じぇーんは来るよな。
じぇ:私はクリスチャンなので、宗教上の理由からお寺の中には入れません、前で待ってます。
真鍋:おやおや、それは面妖な。じゃあ、メンバーはおいおい考えるとして。まずは、香川県からスタートしよう、讃岐うどんを食べて、車でお遍路。

車ではだめなのでは、歩かないとお遍路にはなりませんが…。
車の中で足踏みしていればいいだろう。
じぇ:あれ、マスター。このハンター竜田からの手紙を最後まで読んでみてください。なにか不思議な縁を感じませんか。
真鍋:どれどれ、面倒だから放置していたが面白いことが書いてあったか。
竜田:「手紙」ワイはクリムゾン真鍋がいなくなって世の中の無常を感じたやんけ。よってワイは自分を見つめなおすためにお遍路の旅に行くことにした。八十八か所を回るうちになにか心のよりどころが掴めるかもしれんやんけ。
真鍋:なんとまあ、この手紙によるとハンター竜田もお遍路に回っているのか。では、吾輩は逆回りでお遍路を進めることにしよう。そうすればどこかでハンター竜田とすれ違うこともあるだろう。
じぇ:それはいい考えですね。車で回って難易度の高いお寺はネットの動画で参拝する。バーチャルインチキお遍路ということで、流行になるかもしれません。
不思議な縁に導かれてお遍路に行くことになったクリムゾン真鍋。始まりは4時間に一回のフリーズ発生の現実から逃避するための四国のお遍路。志の低いお遍路の旅に出かけるクリムゾン真鍋だが、ハンターの手紙の謎は明かされるのか。そんななか、F-LABOで黙々と開発を続けるディンガ猫又。がんばれ猫又、デスクリムゾンネオの未来は猫又の双肩にかかっているぞ。