第19回:飛鳥を訪ねて200キロ。

とりあえず、八熊伝の手がかりを求めて今後の方針を確認するハンター竜田、クリムゾン真鍋、そしてじぇーんの三人。

真鍋:相変わらず探していた手がかりはいつも身近な場所に…、まさかハンター竜田の実家の蔵にあるとは考えなかった。

竜田:うちの蔵はブラックホールみたいに先祖代々、徳川家光の時代から受け継いだ由緒正しい宝物を保管しているわけで、探すのも一苦労やんけ。

真鍋:探し物は手の中にある、いわゆる青い鳥理論が今回もさく裂したわけだ。

竜田:さてと、じいさんがとっておいた八熊伝のコピーを探すには、少なくとも1週間はかかるはず、二人で探してもいいんだが、蔵は埃っぽくてシロートが立ち入るとくしゃみばかりすることになるから、ここはワイが探しておくやんけ。

真鍋:それはありがたい。私はハウスダストアレルギーだ、アレグラを飲んだとしても酷いくしゃみに悩まされるだろう。

竜田:そういえば、さっき思い出したが昔読んだ八熊伝の話だが、本のちょうど真ん中あたりに三匹の熊が満月の夜に石舞台で踊り狂うという熊祭りの話があったやんけ、石舞台は話の流れから明日香村だったやんけ。

真鍋:ほほう、それは耳寄りな話だ。ハンター竜田が蔵を調べている間、退屈で困ると思っていたが、私は明日香村の石舞台でも見に行ってイメージを掴んでくることにするよ。

じぇ:私もお供します。石舞台には前から行ってみたかったので。

竜田:では、ここでいったん解散。一週間後に竜田村で会うやんけ。

あっというまに荷物をまとめてフサキビーチリゾートから旅立つハンター竜田。じぇーんとクリムゾン真鍋も、石舞台を目指して伊丹空港へ向かう。

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真鍋:着いた着いた、伊丹空港、結構時間かかったな。

じぇ:違います、マスター。ここは伊丹空港じゃなく、岡山桃太郎空港です。

真鍋:なんで伊丹空港じゃないんだ、納得いく説明をしてもらおうじゃないか。

じぇ:ホテル出発までマスターが慣れない9%のハイボールを飲んで寝てしまったので、伊丹行きの飛行機に乗れなくなりました。で、ちょうど乗り継ぎで岡山桃太郎空港行きのルートがあったので、それを選んだのです、だからいまは桃太郎空港にいます。悪いのは私ではありません、マスターが悪いんです。納得できましたか。

真鍋:ああ、納得したよ。ただ、この桃太郎空港は交通の便が良くない、どうやって石舞台に行くかだな…。

よく寝たので機嫌よく桃太郎空港からの経路を考え始めるクリムゾン真鍋。

謎の人:よお、真鍋はん、久しぶりやないか、ワシのことを覚えてるか。

真鍋:もしかして、君は岡谷教授…、たしかに岡谷教授だ、懐かしいな。

岡谷:ネット眺めてたら、クリムゾン真鍋がニンクリ物語ってのを始めたって情報があって、読んでみるとなかなか楽しそうなことをしているから、ワシも参加しようと思ってここで待ち伏せしてたんだ。どうや、ワシも一丁噛んでいいか。

真鍋:それは心強い話だ、君の実力はよく記憶に残っている。きっとその力が役に立つときがくるだろう。

じぇ:この岡谷さんは、どんな能力を持っている人なんですか、マスター。

真鍋:それは良い質問だ、岡谷教授は、一言でいれば勝負師、得意なジャンルはレースとマージャンとパチンコだ。この3つのジャンルに特殊な能力を発揮してきたのがこの岡谷さん。特にマージャンにおいては、触らなくても見ただけで盲牌ができるとか、タンヤオ&ドラ12で相手を絶望させて勝つとか、これまでいろいろな伝説を作ってきた。だれも太刀打ちできないマージャンのスキルに敬意を表して岡谷教授と呼んでいるわけだ。

じぇ:要するにギャンブルが得意な人なんですね。フィリピンにもカジノエリアがあって、オカダマニラとかシティオブドリームとか人気です。私も時々遊びに行きます。

真鍋:そうか、どうやら、岡谷教授とじぇーんは相性がよさそうだな。

バババーパパパパーパパパパパー、ゴッドファーザーのテーマ曲のクラクションが聞こえる。

じぇ:あ、なんだか、岡谷教授が赤い車から手を振ってます。乗れって言っているような感じですが。

真鍋:おお、あれはまさしく岡谷教授のRX-7、ロータリーエンジン搭載の低い車高で稲妻のように走る、20世紀の名車中の名車、サバンナRX-7。

岡谷:真鍋はん、懐かしいだろ、昔乗ってたRX-7と同じ色の車が売りに出ていたので手に入れた、ワシは軟弱な車には乗らんよ。エンジンは13B、ツインローター654cc×2だ。ステアリングはアバルト、ショックはカヤバ、極めつけはタイヤ、アドバン タイプD、最近再生産が始まったので、10セットばかり買っておいたよ。

アドバン タイプDとは、かつて一世を風靡した、公道レーサー御用達のタイヤである。消しゴムのように消耗する財布に厳しいタイヤだが、それが魅力でもある。2017年にADVAN HF Type Dとして再発売された「出典:近代芸無辞典より」

真鍋:伝説のアドバンタイプD、ブリップは凄いが、消しゴムのように削れていく、財布に厳しいタイプDだな。

岡谷:タイプDは、この非対称のトレッドパターンが魅力だ、雨にも強いよ。

真鍋:では、目的地に向かうとしよう、行き先はだな…。

岡谷:石舞台だろ、奈良県明日香村、1時間少々でつくよ。

石舞台古墳とは、奈良県明日香村にある古墳である。蘇我馬子の墓であるという説が有力であり、宇宙船が着陸するための台ではない。「出典:近代芸無辞典より」

真鍋:石舞台は桃太郎空港から240キロはあるぞ、どうして1時間で着くんだ。

黙ってRX-7を発進させ、すさまじい勢いで下り坂を駆け下りるレーサー岡谷、やがて山陽自動車道から阪神高速神戸線にを走る。

岡谷:阪神高速で爆走して爆死するならそれも本望、旅は道連れ、死ぬときも一蓮托生、潔く散ることにするぞ。

真鍋:ぎえぇ、安全運転で頼むよ、岡谷教授。私はまだ死にたくない。

岡谷:阪神高速は路面の状態がいい、大丈夫だ、220キロで回れないコーナーはない。

すさまじいスピードで阪神高速東大阪線、水走出口を降りるレーサー岡谷。

岡谷:ここからはあえて阪奈道路に入る、この坂は痺れるぞ。しっかり掴まっとけ。

真鍋:タイヤが消しゴムのように擦り減っていく、なんてことだ、アドバンタイプD。ちなみに、野暮なことをきくが、この走りで燃費はどのくらいなんだ。

岡谷:燃費気にして阪奈道を攻められるか。たぶん、リッター2キロくらいだと思うぞ、13Bは極めて燃費が悪いからな。しかもタイプDは2000キロで摩耗する、男らしいタイヤだ。ワシはケチ臭いタイヤは使わんよ。

真鍋:昔と変っていないな、岡谷教授。すべてがみな懐かしい。

私、運転上手い人って素敵だと思います。楽しい♡

ヲイヲイ!

特に急いでいるわけでもないのにRX-7で爆走し明日香村を一時間で目指す岡谷教授とそのスピードにビビるクリムゾン真鍋。三人は無事故で明日香村に到着できるのか、次回をお楽しみに。